Wathematicaで行っている表現論ゼミの紹介をします!
ゼミの概要
発表担当をあらかじめ決めておいて発表する、輪講形式のゼミを行っています。雑談時間などを除くと平均3時間ほどで毎回のゼミをしています。 ゼミ中の様子はこんな感じです。
<表現論ゼミ第21回>
— 理工系学術サークルWathematica (@wathematica) 2022年10月15日
リー群とリー代数の表現について、直和・テンソル積・双対空間の表現を構成しました。 pic.twitter.com/SFxa8LQKjd
基本情報
- メンバー:数学科・応用数理学科のB3, B4 現在は4人
- 使用教科書:途中で教科書を変更しました。*1以下、[F-H], [Hall]と略記します。
- [F-H] William Fulton, Joe Harris "Representation Theory: A First Course"
- [Hall] Brian C. Hall "Lie Groups, Lie Algebras, and Representation Theory"
- 開始時期:2022年1月末
- 活動頻度:週1回、夏休みや試験前は休み
- 活動場所:大学内のホワイトボードがある部屋 or 黒板のある教室
内容について
表現論とは?
代数的な対象(e.g. 群、代数)が線型空間に対してどのように作用するかを記述するのが表現論です。「群などの代数的対象を直接調べるのは難しいから表現によって扱いやすい線型空間の理論によって解決する」「線型空間の対称性を記述する」などが表現論が重要である理由らしいです。 内容に関する詳しい話はここではしませんが、有限群の表現は化学への応用・リー群の表現は量子力学をはじめとする物理学への応用があるそうです。
自分は「代数的組合せ論」を専門にしようと考えているのですが、そこでは当たり前のように表現論が使われているので自分で使えるようになりたいと思って勉強をしています。他のゼミメンバーは皆幾何学が専門で、幾何学的な具体例をたくさん扱うために表現論へのモチベーションがある、と話していました。
必要な予備知識、勉強方法
表現論は線型空間を扱っているので、線型代数の知識が非常にたくさん要求されます。さらに、リー群やリー代数の重要な具体例は多くが行列からなるものであるので、そこでも線型代数の知識がたくさん要求されます。*2逆に、線型代数を勉強したのでそれの応用を見たいという人はぜひ表現論を勉強してみてほしいです。
おすすは下の池田先生の本です!(B1の線型代数のみを仮定して表現論に必要な線型代数を最初に準備してくれます)
テンソル代数と表現論: 線型代数続論 | 池田 岳 |本 | 通販 | Amazon
このゼミから受けた恩恵
モチベーションの維持と向上、これが一番です。以下、少し詳しく書きます。
誤った理解の防止
一人で本を読んでいるときは大丈夫だと思ったこともゼミで発表するとギャップに気づく、ということがあります。話すことで自分で気づく場合や人から言われて気づく場合がありますが、どちらにせよこれは一人で勉強しているだけでは得られないことなのでとてもありがたいことです。発表時に詰められるのはつらいですが…それも発表準備のモチベーションになるのでヨシ!
定期的な勉強の機会
自分はあまりいろいろなことが長続きしないのですが、ゼミ形式で勉強することによって長期的・計画的な勉強をすることができます。
必要な予備知識の補助
(これを期待して人に頼りきりでゼミをするのは良くないとは思いますが…)
このゼミでは他のメンバーが幾何学専攻なのでリー群・リー代数を扱うときの多様体、微分幾何に関して足りない知識を教えてもらっています。また、線型代数の勉強不足な部分についても助けてもらうことが多々あります。自分も他のゼミメンバーの役に立ちたい!とはいつも思っているのですが、残念ながら今のところは特にできていないのでたくさん勉強したいです。
線型代数力の向上
ゼミを始めたころに比べて、線型代数パワーがかなりあがりました。(e.g. 双対空間、テンソル代数、同時対角化、非退化双線型形式)まあ、まだまだ足りないですけど。
最後に
このゼミの今後の予定
しばらくは、Root systemやDynkin diagramが何なのか、それによって何がわかるのかなどを目標として進めていく予定です。余裕があれば、Kac-Moody algebraも少し触れたい…… あと個人的には、新潟に帰省するときに上越新幹線のE7系に乗りながらルート系のE_7について勉強したいと思っています。
過去の活動記録
せっかくの機会なので、今までのゼミ記録をここにまとめておきます。
- 第1回:1/28 [F-H] §1.1, 1.2
- 有限群の表現の基本
- Schurの補題、Machukeの定理
- 第2回:2/4 [F-H] §1.3, 2.1, 2.2
- S_3の表現
- 指標の導入と直交性
- 第3回:2/18 [F-H] §2.3, 2.4
- S_4, A_4の指標、射影公式
- 第4回:2/25 [F-H] §3.1
- S_5, A_5の指標
- 第5回:3/5 [F-H] §3.2, 3.3
- S_dの標準表現から得られる表現
- 誘導表現の存在と一意性
- 第6回:3/11 [F-H] §3.3
- Frobeniusの指標公式
- 第7回:3/25 [F-H] §3.4
- 群環
- 第8回:4/1 [F-H] §3.5
- 係数拡大と表現
- 第9回:4/8 [F-H] §3.5
- 双線型形式による特徴づけ
- 第10回:4/22 [F-H] §4.1
- S_dの表現について成立することを確認
- 第11回:5/6 [F-H] §4.2
- Young図形から既約表現の構成
- 第12回:5/13 [F-H] §4.3
- Frobenius Formulaの証明
(有限群の表現終了、リー群とリー代数の表現へ。)
- 第13回:5/20 [F-H] §7.1, 7.2
- Lie群の導入と具体例
- 第14回:5/27 [F-H] §7.2
- Lie群の具体例
- 第15回:6/10 [F-H] §8.1, 8.2
- Lie代数の導入と具体例
- 第16回:6/17 [F-H] §8.2, 8.3
- Lie代数の具体例と指数写像
- 第17回:6/23 [F-H] §8.2, 7.3
- 被覆空間とSecond Principle
(以降、[Hall]に変更。)
- 第18回:7/2 [Hall] §3.1 ~ 3.4
- Lie代数の可解性と冪零性
- 行列Lie群のLie代数
- 第19回:7/15 [Hall] §3.4 ~ 3.8
- 随伴表現の定義、SO(3)とSU(2)の関係
- 第20回:10/7 [Hall] §4.1, 4.2
- 表現の定義と複素化との関係
- SU(2)の既約表現の構成
- 第21回:10/14 [Hall] §4.3
- 表現の直和、テンソル積、双対
- 第22回:10/21 [Hall] §4.4
- ユニタリ表現、コンパクトLie群の完全可約性
- 第23回:10/28 [Hall] §4.6
- sl(2, C)の表現
- 第24回:11/11 [Hall] §4.7, 4.8
- 第25回:11/25 [Hall] §6.1~ 6.4
- sl(3, C)の表現:Highest weightを用いた分類
- 第26回:12/2 [Hall] §6.5, 6.6
- Highest weight (1, 1)の表現
- Weyl群によるweightの見直し
- 第27回:12/9 [Hall] §6.7, 6.8
- Weight Diagramに関する性質
- 第28回:12/16 [Hall] §7.1
- Lie代数のコンパクト実形から得られる諸性質
以上です!お読みいただきありがとうございました。